haskell-jp / math #11 at 2022-10-15 16:59:31 +0900

ベーシック圏論を読んでいるのですが、その中で対角関手△:Set -> Set×Setというものが出てきました。
これについて、本の中で左随伴Set×Set -> Setは集合の和(A, B) -> A+Bとありました。
ただ、この集合の和はcoproductのことだと思っているのですが、Category Theory for Programmerの中ではcoproductについて射の向きは各要素からcoproductへ向いているもので定義されていたので右随伴なのでは?と少し混乱しています。。
そこで以下のように考えたところ左随伴っぽそうだと思っているのですが認識が合っているかご教授願えますと幸いです。

A+B -> Aの射は図に赤線で書いているように引数の型でパターンマッチングする1つの関数で、見るからに(A, B) -> (A, A)と対応しているように見えます。
一方A -> A+Bの射はA -> Aの恒等射とA -> Bへ移す射の2種類が定義できるので、(A, A) -> (A, B)の射に1対1で対応する射がないため右随伴ではない、と考えています。

すみませんが、この認識が合っているかご教授お願いいたします。
答えられるかわからないのですが、とりあえず、ややこしい随伴の左右を確認させてください :sweat_smile:

左の青字の図が Δ ⊣ + と思ったもので、右の赤字の図が本の記述通りの + ⊣ Δ ですよね?
ありがとうございます!いろいろと雑な文章と絵で恐縮です。。
はい、随伴の左右についてはそのイメージで書いております。
射の一対一対応というのは、`F ⊣ G` を示すために Hom(FX, Y) ≅ Hom(X, GY) が成り立つことを調べるってことですよね。この図では + ⊣ Δ を調べるために A+B -> A(A, B) -> (A, A) の対応を見ていますけど、本当はもっと一般に A+B -> C(A, B) -> (C, C) 、つまり Hom(A+B, C) ≅ Hom((A, B), (C, C)) が同型であることを言わないと随伴性は示せないと思いました。ただ、図で g~1_Af に分解する方法が Hom(A+B, C) の要素を Hom((A, B), (C, C)) の要素に対応させるためにも使えると思うので、方針はそのまま使えそうです。
逆の Δ ⊣ + が成り立たないことをいうには、`h` や 1_A(1_A, h) に対応しなさそうというだけでなく、対応する射が Hom((A, A), (A, B)) に全くないことを言わないといけないと思います。対応しなさそう…ということは感じられるんですけど、具体的にどうすればいいかはわかりませんでした。随伴だと仮定して矛盾を導いたりするんでしょうか…
ご確認ありがとうございます!
射の対応についてさらに一般な対応を見る件なるほどです。。
また成り立たない場合についてもありがとうございます!
雰囲気方針間違ってなさそうだとわかってよかったです。
今ベーシック圏論開いて三角等式の存在を思い出したので、これで成り立たないことを示せたりしないか見てみようと思います。
今更ですが, Δ ⊣ ×,「直積関手は対角関手の右随伴」で,じつは逆に「対角関手の右随伴は直積関手」が言えます.そこで,Setにおいては{0,1,2} + {0,1,2} は6点集合かつ{0,1,2} × {0,1,2}は9点集合で同型を一つも持たないので, + が直積関手ではあり得ないと言うことが得られ,+は対角関手の右随伴ではあり得ない,みたいな論法が普通に使えそうな気がしますね.
一方で,「直和関手」と「対角関手の左随伴」は同等の構造ですが,「直和関手が対角関手の右随伴でない」は任意の圏で成り立つとは限りません。実際、「直積関手」と「対角関手の右随伴」が同等の構造ですが、ある関手が「直積関手」と「直和関手」の両方の構造を持つ例があります。例えば可換な群の圏や可換なモノイドの圏では,対象A,Bに対して
Prod(A,B) := {(X, p_1: X → A, p_2: X → B) | p_1とp_2によってXはAとBの直積となる}
Coprod(A,B) := {(X, i_1: A → X, i_2: B → X) | (X,i_1,i_2) はAとBの直和}
Biprod(A,B) := {(X, p_1: X → A, i_1: A → X, p_2: X → B, i_2: B → X) | (X,p_1,p_2) は 直積,(X, i_1, i_2) は直和,p_1i_1 = id_A, p_2i_2 = id_B, p_1i_2 = 0, p_2i_1 = 0 }
とおくと,自然な射影
Biprod(A,B) → Prod(A,B)
Biprod(A,B) → Coprod(A,B)
が全て全単射になります.つまり直和に自然に直積の構造が入ります.すると、直和関手は直積関手でもあります。
右随伴関手 G は直積を保存する G(X×Y) ≅ G(X) × G(Y) という性質を持つので
今回のケースで仮に G を (+) とすると X = (A,B), Y = (C,D) に対して
G((A,B)×(C,D)) = G((A×C,B×D)) = (A×C) + (B×D)
一方
G(A,B) × G(C,D) = (A+B) × (C+D)
なので ac+bd = (a+b)(c+d) が自然数で成り立たないといけないのですがこれは成り立ちません。
G が (×) の場合は (ac)(bd) = (ab)(cd) で問題ありません。
gksato
ありがとうございます!
+と直積関手が同型でないから右随伴ではないというのは随伴関手が一意に定まるものだから、ということであっていますでしょうか?
それから「直積関手は対角関手の右随伴」の逆「対角関手の右随伴は直積関手」について違いが分かりませんでした。。
随伴は一意なのでどの随伴でもこの両者は必ず満たされるのかと思っていました。

また、直和関手と直積関手の両方の構造を持つ例の自然な射影についても確かめようとしてみたのですが、少し詰まってしまいました。。
こちらもご助言いただけますと幸いです。。
全単射を示す方法がわからなかったので逆射があって合成が恒等写像になればいいのかと思って書いてみました。
後の質問から順番に答えさせていただきます.

Biprod(A,B) → Prod(A,B) の逆射を構成しましょう.それには,(X,p_1,p_2) ∈ Prod(A,B) をとって,i_1: A → X, i_2: B → X であって (X_1,p_1,p_2,i_1,i_2) ∈ Biprod(A,B) なるものが一意に存在することを示せば良いです(全単射性を示せば良いと言っているのと同じ).

今,可換な群やモノイドの圏を考えていますが,それぞれの対象である群やモノイドの算法を,その素性によらず(+,0)で加法的に書くことにします.
可換な群やモノイドの圏では,f,g: A → B において (f+g)(a) := f(a) + g(a) によって f+g: A → B が定義でき,同様に単位元が定義できて結合的なので,Hom(A,B)が可換なモノイドになります.0で単位元0(x) = 0を表すことにしましょう.

(X,p_1,p_2) ∈ Prod(A,B)を任意とします.(X,p_1,p_2) は直積なので,直積の普遍性により
p_1i_1 = id_A: A → A (1)
p_2i_1 = 0: A → B (2)
なる射 i_1: A → X が一意に存在します.
同様に,i_2: B → X であって,
p_1i_2 = 0: B → A (3)
p_2i_2 = id_B: B → B (4)
なる射 i_2: B → X が一意に存在します.

これらのi_1,i_2 の一意性とBiprod(A,B)の定義に(1),(2),(3),(4)が既に含まれていることから,求めるものが存在してもたかだか一つしかないことは証明されました.あとは(X,i_1,i_2) が直和の普遍性を満たすことを示せば良いです.

まず i_1 p_1 + i_2 p_2 = id_X: X → X を示します.
p_1 (i_1 p_1 + i_2 p_2)
= (p_1 i_1) p_1 + (p_1 i_2) p_2
= id_A p_1 + 0 p_2
= p_1
= p_1 id_X
p_2 (i_1 p_1 + i_2 p_2)
= (p_2 i_1) p_1 + (p_2 i_2) p_2
= 0 p_1 + id_B p_2
= p_2
= p_2 id_X
より,直積の普遍性から i_1 p_1 + i_2 p_2 = id_X.
いま,f: A → Y, g: B → Y, とすると,h: X → Y が
h i_1 = f, h i_2 = g を満たすためには
h = h id_X
= h(i_1 p_1 + i_2 p_2)
= hi_1 p_1 + hi_2 p_2
= f p_1 + g p_2
しかなく,こうするとh i_1 = f, h i_2 = g は確かに満たされているので直和の普遍性を満たします.よって示されました.
前の質問については,単純に一意性を使わない議論をしただけですね.一意性を既に学習なさっているかがわからなかったので,「Setの3点集合A={0,1,2},B={0,1,2}の任意の直積(X, p_1: X → A, p_2: X→B)について,その台となる集合Xの要素の数は必ず9となる」,「Setの3点集合A,Bの任意の直和について,その台となる集合の要素の数は必ず6となる」という命題のみを用いて,「Setにおける2対象直和関手である任意の関手Set × Set → Setには直積をとる関手の構造を与えることができない」という命題を証明し,これと「Setにおける2成分対角関手Set → Set × Setの右随伴関手としての構造をもつ関手Set × Set → Setにはかならず標準的に直積をとる関手としての構造を与えることができる」から「Setおける2対象直和関手である任意の関手Set × Set → SetにはSetにおける2成分対角関手Set → Set × Setの右随伴関手としての構造を与えることができない」を示した感じです.
詳細にありがとうございます……!
一つ目について理解しました!書いてくださっているままですが、直積関手と直和関手がそもそも構造が異なるので対角関手の右随伴で必要な構造ではないから直和関手は右随伴にならないということなのですね。

2つ目についても式展開ありがとうございます!
最後に一点すみません、直和と直積の普遍性について自分が今まで見てきた条件とかなり異なっていたのですが、こちらはどのように導出されるのでしょうか?
他の直積・直和になりうる対象の射影を分解する射がただ一つ存在するという条件から上のものを導いてみようとしたのですがうまくいかず。。
お手数をおかけしますが、ご教示いただけますと幸いです。
>1to100pen
直積関手の性質を利用する証明のご提示ありがとうございます!
この性質ですが、以下のような証明であっていますでしょうか?

圏Bでの対象B1, B2の直積をX、圏Aでの対象G(B1), G(B2)の直積をYとして
G(X)はG(B1), G(B2)への射があるので、直積の定義から、h:G(X)->Yが1つ存在することになります。
一方、随伴の関係からq1:Y->G(B1)に対応する射~q1:F(Y)->B1が存在します。
F(Y)もG(X)と同様に直積の定義からf:F(Y)->Xが1つ存在することになります。
このgを随伴の関係で~f:Y->G(X)に写しますと、hと~fが逆射になっており、Yは直積の候補の中での終対象なのでh, ~fの合成は恒等射となり、G(X)とYは同型になります。
したがってG(X)も圏Aでの直積となるので、Gは直積を保持します。

お手数をお掛けしますが、ご確認いただけますと幸いです。。
@t-shibata あー…ベーシック圏論の原書と物理的に離れているのでアレなのですが,「三つ組(X, p_1:X → A, p_2:X → B) が AとBの直積であるとは,任意の三つ組(Y, f: Y → A, g: Y → B) について,次の2条件を満たす射h: Y → Xがただ一つ存在すること: (1) h p_1 = f, (2) h p_2 = g (1) p_1 h = f, (2)p_2 h = g.」っていう定義はお分かりになるでしょうか?
はい、その定義の認識でした。
@t-shibata おわかりもなにも完全に間違えていたので訂正しました. h: Y → X で p_1: X → A なので 合成 h p_1 なんて存在するわけなかったですね….存在するのは p_1 h: Y → A の方です.暗黙に訂正した上でOKを下さったという理解でよろしいでしょうか.
すみません、よく見る定義と似てると思って自分も見落としていました。。
訂正してくださった後の式の定義での認識でした。
だとしたら i_1, i_2 の構成には問題はなくて,i_1 p_1 + i_2 p_2 = id_X の証明がよくわからない,という感じでしょうか?
すみません、i_1, i_2の構成の方からでして。。
「(A, id_A: A → A, 0: A→B)に対して(X,p_1,p_2) の直積の普遍性を使って出てくる射をi_1: A → Xと呼ぶ」,でわかりますか?
ありがとうございます!理解いたしました。
どうしたらp_1 i_1がid_1になるかと思案していたのですが、逆にこういう射があるとしたら普遍性からi_1が導かれるのですね
あとは (X, p_1: X → A, p_2: X → B) 自身に対して(X, p_1,p_2) の普遍性を使うと p_1 h = p_1, p_2 h = p_2 なるh: X → X は一個しかないですから, h の候補が二つあればそれらの候補は等しいですね.
ただ一つだけという条件も出てくるのですね。
少し見えてきた気がします。。!
直和Xに対しても同じように(A, id_A: A->A, 0: B->A)を考えると直和の普遍性からp_1: X->Aが導かれて、X自身へ普遍性を用いるとh: X->Xは一つしかないところにi_1 p_1:X->Xとi_2 p_2:X->Xも作ることができることからi_1 p_1 + i_2 p_2 = hとできる、という感じでしょうか。
あー…違います.直和の普遍性は今証明しているところなので,直和の普遍性を事実として用いることはできません.
(X,p_1,p_2)の直積の普遍性と
p_1i_1 = id_A: A → A (1)
p_2i_1 = 0: A → B (2)
p_1i_2 = 0: B → A (3)
p_2i_2 = id_B: B → B (4)
だけから
i_1 p_1 + i_2 p_2 = id_X: X → X: (5)
が出てきて,(1),(2),(3),(4),(5)から直和の普遍性が出ます.
理解しました!
証明の流れとして直積から出発して直和を示すのに使える式(5)を作った上で直和にもなっていることを示す、ということをされていたのですね。(よく見たら元々書いてくださった方に(5)は直積の普遍性からと書いてくださっていましたね。。)
書いてくださった内容理解できたと思います!ありがとうございました。
蛇足に付き合わせてしまってすみませんでした…
いえ、この内容とても興味深かったですし、直積からi_1の存在を作ることについて、普遍性の使い方を正しく学べたと思うのですごいありがたかったです!
本当にこちらこそ丁寧にご解説いただきありがとうございました。
ちなみに,1to100penさんへの返信についてですが,(X, p: X→A, q: X→B) が 圏Dにおける直積であり,(F: C → D) ⊣ (G: D → C) なる随伴である時,G(X)が単に直積の構造を持ちうるというだけでなく,この直積図式のGによる像(G(X), G(p): G(X)→G(A), G(q): G(X) → G(B)) そのものが必ず直積になります.この命題は「圏Cが直積を持つ」という仮定なしに成り立ちます.ということで,t-shibataさんの証明のようにYとG(X)の同型を証明するだけでは「G(X)が直積の構造を与えられうる」ということしか示せませんし,そもそも「圏Cが直積の構造を持つ」を使わないとYの存在は言えませんが、Yの存在は仮定しなくても命題を証明できます。
ありがとうございます!
すみません、こちらの証明をしてみようとしているのですがわからず。。
ちょっと自分で導けないか今日一晩頑張ってみようと思っているのですが、これは随伴の自然性だけで示せる感じでしょうか?
随伴を与えるhom-setの同型とその自然性と関手が関手の条件を満たすことから証明できると思います!
こうでしょうか。。
自然性の適用できそうな箇所は限られているので、もともとの自分の証明のうち、圏Cの直積の仮定のみを無くしたようなものしか思いつきませんでした。。

圏C, D、随伴(F: C → D) ⊣ (G: D → C)があり、(X, p1: X→B1, p2: X→B2) が 圏Dの直積とします。
(Y, r1: Y→B1, r2: Y→B2)に対して直積の定義からr1 = p1∘h, r2 = p2∘hとなるh: Y→Xがただ一つ存在します。
このX, YをGで写したG(X), G(Y)について、G(h)がただ一つ存在し、また、G(r1) = G(p1∘h) = G(p1)∘G(h)となるため、圏Dでの直積が圏Cでも保たれます。
また、q1: A→G(B1), q2: A→G(B2)を持つ任意のA∈Cがあるとします。-- (1)
随伴の自然性から~q1: F(A)→B1, ~q2: F(A)→B2がただ一つ存在します。
Xが直積なので~q1 = p1∘f, ~q2 = p2∘fとなるf: F(A)→Xがただ一つ存在します。
ふたたび随伴の自然性から~f: A→G(X)がただ一つ存在します。-- (2)
(1)なAに対し(2)が成り立つので(G(X), G(p): G(X)→G(A), G(q): G(X) → G(B))は圏Cの直積となります。
証明の意味がよく分かってなくて,「圏Dでの直積が圏Cでも保たれる」という言葉の意味は機械的に「(X,p1: X → B1, p2: X → B2)が圏Dでの直積ならば(G(X), G(p1): G(X) → G(B1), G(p2): G(X) → G(B2))がけんCでの直積である」ということです(だって直積とは対象ではなくて三つ組のことだから).「圏Dでの直積が圏Cでも保たれる」と言った時点でそれが証明できているようには見えないんですよね….G(h)がただ一つ存在する,という言い方と「随伴の自然性から~q1: F(A)→B1, ~q2: F(A)→B2がただ一つ存在します。」も割と謎です.ごめんなさい,仮にも数学側の人間なんだから理解力を持って聞くべきなんですが….
ご確認ありがとうございます!
いえ、自分は本当に数学については雰囲気でしか触れてきていなかったので、このようにしっかり確認していただけるのはとてもありがたいです!
一つ目のご指摘について、自分としては圏Dで直積の性質を持つ(という表現が正しいか分かりませんが)XとYが圏Cでも同じ関係性を持っているというようなことを言えればと思っていました。
ただ仰って下さったようにあの表現では、そもそも証明をしたい命題自体を指すものになってしまっているのが誤りという感じでしょうか。
二つ目について自分の直積の定義は「直積(X, p1: X->B1, p2: X->B2)があるときに、(Y, q1: Y->B1, q2: Y->B2)があるとすると、q1 = p1○h, q2 = p2○hとなるh: Y->Xがただ一つ存在する」、随伴の自然性はD(F(A), B)≅C(A, G(B))なので、「f: F(A)->Bに対応する~f: A->G(B)がただ一つ存在する」という認識をしていて書いていました。

圏論というより数学としての論理の前提的な部分な気がして大変申し訳ないのですが、認識の誤りがありましたらご教示いただけますと幸いです。。
まず,一番簡単に指摘できることから.随伴の自然性の主張は間違っているかと思います.
D(F(A), B)≅C(A, G(B)) for A ∈ Ob(C), B ∈ Ob(D)
は随伴のHom-同型とか呼ばれている命題ですが,そもそも
C^{op} × D ∋ (A^op,B) ↦ D(F(A),B) ∈ Set
C^{op} × D ∋ (A^op,B) ↦ C(A,G(B)) ∈ Set
は共に関手です. Ob-写像は上の通りで,Hom-写像は次の通りに定義されます: (f: A’ → A)^op = (f^op: A^op → A’^op) が C^op の射(f: A’ → A自体はCの射), g: B → B’ が Dの射であるときに Set の射
D(F(f), g): D(F(A), B) → D(F(A’), B)
C(f, G(g)): C(A, G(B)) → C(A’, G(B’))

D(F(f), g)(u: F(A) → B) := g u F(f): F(A’) → B,
C(f, G(g))(v: A → G(B)) := G(g) u f: A’ → G(B’)
として定まるわけです.

そして,随伴のHom-同型は,単に各A,Bそれぞれについて同型というだけでなく,
C^{op} × D ∋ (A^op,B) ↦ D(F(A),B) ∈ Set
C^{op} × D ∋ (A^op,B) ↦ C(A,G(B)) ∈ Set
が関手として自然同型である,つまり各A,Bについての同型を束ねたときに自然変換とみなせる,ということが要求されます.これが随伴の自然性です.
ありがとうございます!
つまり自分の考えていましたのはただ単に2つのHom集合が同型というだけの条件で、随伴の自然性はそれだけでなく関手として見たときに自然同型であることが抜けていた感じでしょうか。
そしてこの関手として自然同型である条件をわかりやすくしているのが自然性条件のF(A)→B→B'の転置がA→G(B)→G(B')になるというものに集約されているのですね!
うん、あってそうです。もちろん、自然性条件がもう一個あるのもお忘れではないですよね?
はい、F(A')→F(A)→Bの転置がA'→A→G(B)となることですね。
確認なのですが、この条件はD(F(A), B)→D(F(A'), B)の射関数とC(A, G(B))→C(A', G(B))の射関数で作られる可換図式を簡略化したものであっていますでしょうか?
はい、そうです。
Hom-同型の自然性はそのままではSetの射の可換図式ですが、Setの射の可換図式は写像の等式で、写像の等式は各要素への適用結果の等式で、この「適用結果」を書き下してみると圏C,Dにおける可換図式に見えてより分かりやすくなる、という格好になってますね。
ありがとうございます!ようやく自然性条件をちゃんと理解できたように思います。

これをもとに元の話の証明についてなのですが、そもそも証明の進め方と書き方がちゃんとしてない気がしてまして。。
大筋として
「圏Dの直積(X, q1: X→B1, q2: X→B2)をGで圏Cに移したもの(G(X), G(q1): G(X)→G(B1), G(q2): G(X)→G(B2))が圏Cでの直積」を示すために
「対象A∈Cについて(A, p1: A→G(B1), p2: A→G(B2))があるとき、p1 = G(q1)∘h, p2 = G(q2)∘hとなるh: A→G(X)がただ一つ存在する」を随伴の関係性などから証明していく、という順番はまずあっていますでしょうか?
あっています.そしてもっとわかりやすいように追加すると,φ(x)がxに関する条件であるとき,「φ(x)を満たすxがただ一つ存在する」(唯一存在)という言葉の意味は,「『φ(x)を満たすxが存在する』(存在性)かつ『任意のx,yについて,φ(x)とφ(y)の両方が成り立つならx=y』(唯一性)」と分解して定義されているので,バラバラに証明してみることをお勧めします.もちろん,「『任意のyについて,φ(y)ならx=yである』を満たすyによって変化しないxが存在する」と「φ(x)を満たすxが存在する」の二つを証明しても同値です.
ありがとうございます!この場合で行きますとφ(x)のxに相当するのはh: A→G(X)であっていますでしょうか?
あってます!
ありがとうございます!もう一度この感じで証明考えて見ようと思います!
これでどうでしょうか!

示したい命題:
圏C, D、関手F: D→C, G: C→D, 対象X∈Dについて直積(X, q1: X→B1, q2: X→B2)があるときに、
対象A∈Cについて(A, p1: A→G(B1), p2: A→G(B2))があるとき、p1 = G(q1)∘h, p2 = G(q2)∘hとなるh: A→G(X)がただ一つ存在する

証明:
随伴から以下の関手を考える。
D(F(A), -): X∈D→D(F(A), X)∈SetとC(A, G(-)): Y∈C→C(A, G(Y))∈Set
FとGが随伴なので自然変換α: D(F(A), -)→C(A, G(-))があり、かつ逆射α_invが存在する。

射hの存在性:
対象A∈Cについて(A, p1: A→G(B1), p2: A→G(B2))のp1についてr1 = α_inv(p1): F(A)→B1が導かれ、同様にr2: F(A)→B2が導かれる。
圏DでXの直積があるため、k: F(A)→Xで、
q1∘k = r1: F(A)→B1かつq2∘k = r2: F(A)→B2 --(1)
となるものがただ一つ存在する。
(1)の両辺にαをかけると
α(p1∘k) = α(r1)
随伴の自然性から左辺はh = α(k): A→G(X)として
G(p1)∘h = α(r1)
r1 = α_inv(q1)かつ、α∘α_inv = 1より
G(p1)∘h = q1
同様にG(p2)∘h = q2となるため、条件のh: A→G(X)が存在する。

射hの一意性:
p1 = G(q1)∘h, p2 = G(q2)∘hと分解できるhとしてh1, h2があるとする。
h1についての式の両辺にα_invをかけて
α_inv(p1) = α_inv(G(p1)∘h1) = p1∘α_inv(h1): F(A)→B1
α_inv(p2) = p2∘α_inv(h1): F(A)→B2
直積の定義からα_inv(h1)は上記の2式を満たすただ一つの射となる。
同様にh2についても
α_inv(p1) = p1∘α_inv(h2): F(A)→B1
α_inv(p2) = p2∘α_inv(h2): F(A)→B2
こちらでもα_inv(h2)が上記2式を満たすただ一つの射となるため、α_inv(h1) = α_inv(h2)
両辺にαをかけて
h1 = h2
したがって条件のhは一意となる。
あってますね。「かける」は一応語法としては間違ってて、「適用する」とか「作用させる」とかが正しいと思いますが、これを読んで理解できない数学者はいないと思います。完全に正しい証明です!
おぉぉありがとうございます!おそらく高校以来くらいのちゃんとした証明だったので結構感動しています……w
この調子で読み進めと証明していこうと思います!

ところで最後に一点お伺いしたいのですが、数学記号を打ち込む際はどのようにされていますか……?
「→」は「やじるし」で出るのですが、随伴の記号などは「ずいはん」で出てはくれないので、IMEに登録しています。
こうして使うものを適宜登録していくくらいしかやりようはない感じでしょうか。
はい、私もそうしています。面倒ですが、幸いiOS/macOSだとユーザー辞書が日本語入力でなくてキーボードに紐づいてくれているので、「¥ alpha」は「α」だとか 「¥ dashv」は「⊣」とかTeX表記を登録して使っています。
そうなんですね!TeXは全く使ったことがなかったのですが、いい機会なのでうちのiPadにはそれで入れて行ってみようと思います。
色々とありがとうございました!