去年、WindowsでHaskellを扱う時によく遭遇するエラーと対処法という記事で、WindowsユーザーがHaskellで開発したとき、あるいはHaskell製のプログラムを使用した際によく遭遇するエラーやその回避方法を紹介しました。
今回は、そこに追記したい内容として、最近私がよく出遭うようになったエラーを紹介します。
Link to
hereopenFile: does not exist (No such file or directory)
といわれたら短いパスに移そう
does not exist (No such file or directory)
というエラーは、本当に読んで字のごとく、開こうとしたファイルが存在しないためのエラーであることとがもちろん多いのですが、エラーメッセージに反して違う原因である場合もあります。
例えば、最近私はとあるプロジェクトを数文字長い名前にリネームしたのですが、たったそれだけで、stack test
した際必ず問題のエラーが発生するようになってしまいました。
$ stack test
a-little-longer-name-project-0.1.0.0: build (lib + exe + test)
Preprocessing library for a-little-longer-name-project-0.1.0.0..
Building library for a-little-longer-name-project-0.1.0.0..
Preprocessing executable 'mmlh' for a-little-longer-name-project-0.1.0.0..
Building executable 'mmlh' for a-little-longer-name-project-0.1.0.0..
Preprocessing test suite 'a-little-longer-name-project-test' for a-little-longer-name-project-0.1.0.0..
Building test suite 'a-little-longer-name-project-test' for a-little-longer-name-project-0.1.0.0..
[1 of 5] Compiling Paths_aLittleLongerNameProject ( .stack-work\dist\5c8418a7\build\a-little-longer-name-project-test\autogen\Paths_aLittleLongerNameProject.hs, .stack-work\dist\5c8418a7\build\a-little-longer-name-project-test\a-little-longer-name-project-test-tmp\Paths_aLittleLongerNameProject.o )
.stack-work\dist\5c8418a7\build\a-little-longer-name-project-test\a-little-longer-name-project-test-tmp\.stack-work\dist\5c8418a7\build\a-little-longer-name-project-test\autogen\Paths_aLittleLongerNameProject.dump-hi: openFile: does not exist (No such file or directory)
どういうことかと悩んでいたところ、こんなIssueを見つけました。
Snoymanの指摘のとおり、こちらの問題はWindowsで使えるパスの長さが原因のエラーのようです。
どういうことかというと、MSDNのこちらのページでも触れているとおり、Windowsの(C言語レベルでの)各種ファイル操作用APIでは、一度に扱えるパスの長さが260文字までと決められていて、その制限にかかったためのエラーだというのです!
does not exist (No such file or directory)
なんてエラーメッセージで表されるのでわかりづらい!(おそらくWindowsのエラーコードの出し方に問題があるんじゃないかと思います)
DOS時代から残るこの制限、完全に時代錯誤なものでしかないのですが、Windowsでパッケージマネージャーなどが自動的に作ったパスを扱っていると、しばしば出くわすことがあります。
stackにおいても、こちらのIssueで同じ問題が議論されていたり、ver. 1.6.5のChangeLogでも言及されていたりと、至る所で格闘している跡があります。
Link to
here回避方法
そんなdoes not exist (No such file or directory)
ですが、残念ながら私が知る限り、プロジェクトなどのパスを(C:\
などのよりルートに近い場所に置いて)より短くする以外の回避方法はありません。
haskell-ide-engineのインストール方法のページ曰く、(新しめの)Windows 10であれば、グループポリシーを編集して、「Win32の長いパスを有効にする」を「有効」にすれば回避できるとのことですが、残念ながら手元で試した限りうまくいきませんでした。何かやり方がまずかったのかもしれませんが。
いずれにしても、stack build
コマンドなどを実行したときに問題のエラーに遭遇した場合、ビルドしたいもののパスをなんとかして短くする以上の方法はありません。
C:\
直下をホームディレクトリのように使う人が今でもたくさんいるわけです。
一方、あなたが問題のエラーが発生するプログラムを修正することができる立場にある場合、次の方法で回避できるかもしれません。
Link to
here長いパスをより短くするために、カレントディレクトリーを変更して、相対パスを短くする。
本件はあくまでも、Windowsの各種ファイル操作用APIの1回の呼び出しで渡せる長さの制限ですので、制限を超えてしまうような場合はパスを分割すればよいのです。
filepathパッケージのsplitFileName
関数やsplitPath
関数を駆使してパスを分割した上で、対象のファイルの親ディレクトリーまでdirectoryパッケージのsetCurrentDirectory
関数で移動すれば、制限に引っかからないはずです(時間の都合でこちらについては試すコードを用意しておりません。あしからず)。
残念ながらカレントディレクトリーはプロセス全体で共有される情報ですので、マルチスレッドなプログラムでは頭の痛い問題が出てきてしまいますが、一番確実に回避できる方法のはずです。
マルチスレッドである場合を考慮したくない場合は、次に紹介する方法を検討するとよいでしょう。
Link to
hereWin32 APIのユニコード版の関数に、\\?\
というプレフィックスを着けた絶対パスを渡す。
ここまでに出てきた、「Windowsの各種ファイル操作用API」は、すべて「Win32 API」と呼ばれるWindows固有のAPI群の一部です。
この「Win32 API」に含まれる関数の多くは、「ユニコード版」とそうでないものに分かれます(詳細はConventions for Function Prototypes (Windows)をご覧ください)。
このうち、「ユニコード版」のAPIには、この制限を緩和する専用の機能が含まれています。
先ほども触れたMSDNのページ曰く、なんと\\?\
という変な文字列を絶対パスの頭に着けると、最大約32,767文字のパスまで受け付けるようになるというのです!
なんともアドホックな感じのする解決方法ですが、Microsoftが言うんだから間違いありません。
いずれにしても32,767文字という微妙な最大文字数ができてしまいますが、UTF-16での32,767文字なので、そう簡単に超えることはないでしょう。
いちいち絶対パスに変えて変なプレフィックスを加えないといけないという面倒くささはありますが、いちいち分割して相対パスに変換するよりは簡単なはずですので、検討する価値があります。
この、\\?\
機能を試す場合、下記のコードを適当なファイルに貼り付けて保存し、stack runghc file.hs
などと実行してみてください (Thanks, @matsubara0507!)。
catch
関数を使って例外を捕捉している箇所では、実際にパスが長すぎるためにエラーが発生し、catch
されているはずです。
import Control.Exception (catch, IOException)
import Data.List (replicate)
import System.Directory
main :: IO ()
= do
main <- getCurrentDirectory
crDir let
= mconcat $ replicate 20 "abcdefgh/" -- ok
path1 = mconcat $ replicate 30 "abcdefgh/" -- error
path2 = crDir ++ "/" ++ path2 -- error
path3 = "\\\\?\\" ++ path3 -- ok
path4
putStrLn $ "path1: " ++ show path1
True path1
createDirectoryIfMissing
putStrLn $ "path2: " ++ show path2
True path2 `catch` (\e -> putStrLn $ " " ++ show (e :: IOException))
createDirectoryIfMissing
putStrLn $ "path3: " ++ show path3
True path3 `catch` (\e -> putStrLn $ " " ++ show (e :: IOException))
createDirectoryIfMissing
putStrLn $ "path4: " ++ show path4
True path4 createDirectoryIfMissing
Link to
hereおわりに
さて、またしてもWindows固有の面倒な問題を紹介することとなってしまいましたが、俗世の喜び(主にゲーム)と簡単にインストールできるGUIに慣らされてしまった私は、今後もWindowsを使い続けるつもりです。
いろいろ困難は尽きませんがこれからもWindowsでHappy Haskell Lifeを!🏁🏁🏁
Link to
here参考URL
※本文中で言及していないもののみ